「帰宅風景」


「・・・ミサトさん、今日も遅くなるのかな・・・」
 シンジは、考え事をしたまま、人の流れとともに、駅の改札を通った。
 今日は、土曜日で学校は半休。ネルフ本部での訓練も終えて、葛城ミサトの
自宅のあるコンフォートへと帰る途中であった。
 アスカは、新兵装のテストのため、2時間ほど居残りである。
(・・・途中で、商店街によって行こう・・・・)
 シンジは、今朝見かけた特売のチラシを思い出して、一人うなずいていた。
 環状リニアは、下校途中の学生達でほぼ満員だった。時刻は4時過ぎ。
「わっ・・・と・・・うっ・・・・」
 自己主張の苦手なタイプであるシンジは、ぐっ、ぐっと人の流れに押されて、
反対側の入り口近くまで押されてしまった。座ることは元から期待していないが、
20分ほどの乗車時間は、かなり辛いものになりそうだった。
「はぁ・・・・」
 乗車してきたのとは反対側の入り口の、ドア近くに華奢な体をおしつけられた
シンジは、なんとか体をくねらせて、手すり近くの、わずかな空間に体を
滑り込ませた。第三新東京市に越してきて数ヶ月、満員電車の「楽な場所」も
ようやく身に付いたようである。
 だが、シンジは、まだそれでも経験が足りなかったと言える。
 その空間は・・・いわゆる「痴漢」にうってつけの場所でもあるのだった。


(・・・えっ・・・)
 シンジ少年は、びくんと体をふるわせた。
 彼の、細い腰の辺りを、さわっとなでられたのである。
 壁のほうをむいていた姿勢のまま、必死に顔をめぐらせて背後を見るが、
かわった人は見あたらない。時間のせいか、ほとんどが学生。同じ中学の
制服や、近くにある高校の制服にまじって、ちらほらと営業らしい会社員
の姿も見られる。
 だが、自分の近くは、ほとんどが学生・・・しかも女子・・・である。
それらしい人は見られなかった。
「・・・・ひぁっ!」
 今度は、シンジは息を吸い込むような小さな悲鳴を上げてしまった。
リニアの走行音と周囲のざわめきで、聞いたものはいなかっただろうが・・・
シンジの制服のズボンのお尻を、つーっと、誰かの手のひらが撫でていったの
である。
(いまの、絶対、偶然じゃない!!)
 また、周囲を懸命に見回すシンジ。多少、乗り降りがあったようだが、
自分に触れられるぐらいの距離にいるのは、全員女性である。
(ほっ・・・よかった・・・じゃなくて!)
 少なくとも、へんなお兄ちゃんに悪戯されているわけではないことは
わかって、一瞬安心するシンジ。が、問題は全く改善されていない。
奥手なシンジは、「痴女」だの「ショタコン」だのという物騒な人種に
冠する知識は、無いに等しかったのである。


と、リニアがカーブにさしかかったのか、ぐうっと人の流れが傾く。
シンジのほうにも、周囲の女子達がぐっともたれてきた。
(・・・・ぅわぁっ!)
今度は唇を結んでいたので、なんとか悲鳴は上げなかったシンジ。
だが、壁に押しつけられるように姿勢のまま、全身をびくっと振るわせた。
一つの手が、するっとその細い腰に巻き付き、もう一方の手が、シャツと
裾から、草むらを走り抜ける蛇のような素早さで、シンジの胸元へと
滑り込んだのである。
同時に、背中に、ふわっとした弾力のあるものが押しつけられる感触。
背中から、抱きしめられているとわかって、身動きのとれないまま
顔を真っ赤にして硬直していた。
「・・・・くすくす・・・・」
 耳元で、まだ若い・・・多分、まだ20には届いていないと思う・・・
女性のささやくような笑い声。
(あ・・・やっぱり、女の人だったんだ。よかった・・・いや、良くない!!)
なんとか身をよじって相手を確認しようとするのだが、どこをどう押さえられ
ているのか、体をよじることもできなかった。
「・・・驚いた。意外と、可愛い顔してるのね、サードチルドレン?」



 耳元で、甘い香りのする声が、そうささやいた。びくん、と別の戦慄に
体を震わせるシンジ。
(どこかの・・・敵対組織!?)
 反射的に、ポケットの中に手を入れるシンジ。緊急用の本部直通コールボタン
が入っている。だが、ポケットの中には、そのボタンはなかった。携帯電話も、
財布も、学生証すらも無いポケットは、むなしく布地の感触だけを伝えてきた。
「・・・無駄よ、動かないで。」
 耳元の声が、小さく、鋭くささやく。
「さっき、貴方の持ち物は、すべて預からせて持ったわ。
 ・・・抵抗しなければ、後で返却するから。」
 シンジの体を、ただまさぐっていたわけではないらしい。
「抵抗しない限り、貴方の安全は保障されるわ。ただ、抵抗すれば・・・」
 シンジの裸の胸元に差し込まれていた手が、わずかに上に移動し、
シンジの喉を、細い指がそっと挟んだ。
 そして、シンジの腰に回されていた手は、あくまでも優雅な動作のまま、
シンジ少年のベルトをゆるめて、学生ズボンの中へ・・・・あまつさえ、
お気に入りのトランクスの中へ・・・するりと滑り込んだのである。



「うぁっ!!」
 さすがに今度はかなり大きな悲鳴を上げるシンジ。あげてしまってから、
恥ずかしさに真っ赤になりながらも、誰か気づいてくれないかと周囲を見
回す。が、いつの間にか、様々な制服・・・主に、近くの高校だ・・・・
の女子が、まるでフェンスでも作るかのように、周囲をぐるりと囲んでいて
それ以外は視界に入らない。みな、すべてシンジより背の高い少女達である。
「・・・もしかして・・・・」
 青ざめたシンジに、背中に張り付いた少女が残酷な言葉を伝える。
「サードチルドレン、あきらめて。周囲は、みんな私の仲間よ。」
 二の句も告げないシンジ。その時、体勢がわずかにかわって、背中から
彼を抱きすくめている、その少女の顔が、ようやく目に入った。
「・・・初めまして、サード?」
「・・・・・・・」
 緩くウェーブのかかった、背中まである黒髪の少女だった。利発そうに
はっきりした目の、かなりの美少女である。シンジの中学校のすぐそばの
女子校の制服を着ていて、17.8才ほどに見えた。
「これから、4つ先の駅で降りてもらうわ。良いわね?」
「・・・・」
 無言のままでうなずくシンジ。ここならばともかく、一度リニアを下りて
しまえば、常に自分たちの護衛についているネルフのガード達が気づいて
くれるだろう。それまでは、言うことを聞いていた方が得策だ。
 何より、「貴様の息子は預かった」という状態では、抵抗のしようもない。
さらに、問題なのは・・・・ 
「協力的でたすかるわ。・・・えっ?」
 笑顔のまま、小声でささやいた少女の表情が、微妙に変わる。
 少女の右手が「捕らえて」いるシンジ少年のペニスが、その重さと大きさ
を、一気に増しているのに気づいたのである。


「・・・・大した度胸ね、サード・・・」
 あきれたような、笑いを含んだ声に、うつむいてますます顔を真っ赤にする
シンジ。自分の命が危機にさらされているというのに(むしろ、そのせいかも
しれないが)自分の意志とは全く無関係に、彼のペニスは痛いほど堅くなって
しまった。
 13.4才の中学生である。目覚めている時間の9割までが「性」に向いていて
当然な世代の上、目の前の少女は美女・美少女には慣れているはずのシンジも
十分に綺麗だと思わせるほどの美少女である。その彼女に、電車の中で、自分
の性器を、じかに触れられている。しかも、周囲にたくさん人のいる、満員の
電車の中でという非日常的な感触が、いっそう彼を興奮させていたのだろう。
「・・・・でも・・・・」
 それまで、威嚇するように睾丸の部分をもてあそんでいた細い指が、シンジ
の張りつめたペニスの先端を、優しくなでさすった。
「・・・・別に、こういうのも悪くないけど・・・・」
 シンジは、思いもかけない相手の台詞に、泣きそうな表情を浮かべた。

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